仔犬/藤原有絵
大人になっても手のひらサイズだという
仔犬の栗色の毛を撫で付けながら
この命はいつでも私に掌握されているのだ
と、思う事で
わりと穏やかな生活をおくることができる
上手に泳ぐ事を叩き込まれた世代が
心の芯を冷やしたまま
もっと冷たい未来に向かって潜っていくの
ぼんやりみていて いいだろうかしら
いいだろうかしら
その問いかけは軽いめまいを伴って
虚飾の光で駆けていく子供に追いつけない
こんな私を叱りながら
しわくちゃの戦闘服を脱ぎ捨てる恋人は
とても潔い人で
どうせならその身軽さで
「夢を叶える街」へ行けばいいのにと思っている
穏や
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)