仔犬/藤原有絵
 
大人になっても手のひらサイズだという
仔犬の栗色の毛を撫で付けながら
この命はいつでも私に掌握されているのだ

と、思う事で
わりと穏やかな生活をおくることができる


上手に泳ぐ事を叩き込まれた世代が
心の芯を冷やしたまま
もっと冷たい未来に向かって潜っていくの
ぼんやりみていて いいだろうかしら

いいだろうかしら

その問いかけは軽いめまいを伴って
虚飾の光で駆けていく子供に追いつけない


こんな私を叱りながら
しわくちゃの戦闘服を脱ぎ捨てる恋人は
とても潔い人で
どうせならその身軽さで
「夢を叶える街」へ行けばいいのにと思っている

穏や
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