なにももたらさない人間/短角牛
 
なにももたらさない人間は

寂しかった

何かをもたらしたかったのに

いつも途中であきらめた
なにももたらさない人間は

必要とされたかった

でも自分を信じれなくて
他人を信じる自分を信じれなくて

他人に信じてもらえなかった

なにももたらさない人間は

虚しかった

生きていて何もなかった

実際には何かあったはずだがその価値を見いだせなかった

なにももたらさない人間は

頭はよかった

膨大な情報の大半は覚えたが

しかしなにひとつ完全ではなかった

なにももたらさない人間は

独りで海を見ながら

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