路傍/木屋 亞万
線路が2本ある
上りと下りの電車が
すれ違う場所がある
鉄骨の狭間
砕石の中
ひび割れた
コンクリートに
根を張る
一本の花が
風に巻き込まれて
揺れている
電車はすれ違い
空気は窓の外
顔を掠め合って
目を回している
互いに窓を叩き合い
警笛を交わす
踏み切りはいつも
終わりに出遅れる
黄と黒の棒が上がれば
人は行き交い
車は駆け出す
花は端で見ている
横断路の真ん中辺り
音は目まぐるしく流れた
花びらは少しずつ
剥がれていき
上下合わせて数百本が
すれ違ったであろう頃
花は錆びた
雨ざらしの線路の間
焼け木杭のように
朽ち始めていた
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