たすけてください/佐々木妖精
 
初めての記憶
それは母に手を引かれ
七つの子を歌ってもらった記憶
母が私の10倍生きていた記憶

木綿のように滑らかなその手に
生活という兆しがささくれ立っても
私をいつまでも包み、育んでくれたその手

強い記憶
それは蜂に刺され
象のように汗ばんだ大きな背中に揺られた記憶
父が私の6倍生きていた記憶

病院での処置に泣く身体を押さえ
チョコレート菓子を買ってくれた
私の背丈ほども幅のあった背中



絶対に追いつけないと思っていた
どこからきたのかすら分からないというのに
二人は気がついたらもう
道しるべのように
そこにいた

世界は父と母から
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