障子の影/佐々宝砂
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まあ、話を急がないでくれよ。これで終わりではないんだ。
長いあいだ、ぼくはその家の前を通り過ぎるだけだった。ランドセルを背負って、同級生の悪ガキどもと一緒にね。よくジャンケンをして、負けた奴が何人分かのランドセルを持つってのをやった。あるときぼくは大負けして、八人分のランドセルを持つはめになった。八人分だよ、八人分、持てる訳がない。ぼくは山になったランドセルを呆然と見下ろして、通りに立ちすくんでいた。ジャンケンに勝った連中は、にやにやしてぼくのことを見るし、気の早い奴はもうどんどん公園に走っていってそこで遊んでいる。とにかく公園まで運んでしまえばいいのだから、分けて持っていった
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