隣/城之崎二手次郎
 
 推理小説家の大島は、スランプに陥っていた。四百以上の作品を書き、殺しのネタはとうに尽きていた。締め切りをひかえ、ホテルで執筆する予定だったが、隣室から聞こえる声に邪魔されていた。女は獣のように吼える。男は精力絶倫らしく、ことが始まってから三時間がたとうとしていた。ふとわれに返り手元の原稿を見ると、隣室の声から想像した官能小説ができあがっていた。その年、大島の「絶倫ホテル」はベストセラーになった。

あとがき。
二〇〇字物語第十一弾。
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