「側面」/菊尾
 
寝息を立てられるぐらい
安心できるみたい
消え入りそう
でも確かに掴める
そういった存在だけが僕に映っていた

君は拾うために全てを投げ捨てた
今まで手にした全部を投げ捨てた
肩に落ちた枯葉
伸ばしていた爪と髪
今日を見送るように
歩道橋から夕焼けを眺めていたんだ

照準も定まらないままで
ただ闇雲に投げつけて
勝手な理屈を事象の理由にして


「そんな風には生きられない」
生きようとさえしないのに
見覚えの無い傷は増えていく
僕には術がないことを知る


間違うように
繰り返すように
そうやって動いている
最初の雨粒が染み付いたまま
その視界に触れていたいと願っていた


きっとあの日がまた来れば
どうにかなってしまうだろう
今度があるならば普通に、
正常に、
君にただ、魅せられたい

戻る   Point(0)