架空少女事典/望月 ゆき
重たい表紙を開くと
『夏の項』だった
限りなく続く
かのような 草っぱらの
ずっとずっと向こうから
薫風に押されて
あるいは 乗って
バラ色に染められる
その足跡
あらゆる気持ちにフタをして
どうにか
仲良くならないように、と
つとめても
入道雲
さしだされる手の
涼しさ
かたくなを忘れ
手を伸ばしてしまうと
次の瞬間にはもう
忘れてしまうような
けれど やさしい
ことばを残し
少女は消えゆく
草っぱらの
ずっとずっと向こうへ続いた
バラ色の足跡も。
開かれた
その頁さえ。
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