「息」/菊尾
 
爪先から抜けていく
君がくれた熱は僕のものにはならなくて
隣に居ることが出来ないと分かったあの日から
君がくれた熱はまた君の元に戻っていくみたいに
僕から抜けていくよ

熱を辿ればきっと君に会えるのだろうけど
躊躇うことなく抜けていく
熱の後ろ姿がとても綺麗だから
見届けるために僕はジッとしている

細いけど柔らかかった手は
今は誰の手の中で丸まっているんだろう
これからの日
寒さで君が丸くなっていて
それを包む両手があればいい
僕の手は僕が吐く息で温めるさ

白い息が僕の手の中でうずくまる
両手で抑えこんでちょっとだけ隙間を開けておく
少しずつ昇っていく僕の息を眺めた
星空を
どこまでも
どこまでも

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