夜/ムラコシゴウ
て
子どもよ
いつか
彼がいたエリアに立ったそのとき
君にもわかる日がくるさ
君の父親は
せんちめんたる・ふーる
かつて
アカムラサキの花を愛し
君を愛し
そして僕らを
五線譜のない音楽の流れる世界へと
いざなってくれた
稀代のビルトゥオーソだ
かつて
アカムラサキの花が愛し
僕らが愛し
そして君が
見上げたその瞳の中で
清らかに微笑んでいた
不世出の優しき魂だ
君の歩みは
もう輪廻の音を奏ではじめている
遠き刹那への長い道のりへと
子どもよ
まだ足下は覚束ないけれど
*****
? 冷雨
踏みしめるたびに僕の右足の靴底が
ひゃあひゃあ
鳴いている
今日はやけに
ひゃあひゃあ
泣いている
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