「navy blue」/菊尾
 
タガを外したくて
気がクルった風な身振り手振りが
違う違うと笑いながら言うあの感じの手の動き
それに似ていた。
左から右へ右から左へと。

カナシミは無くなった。
よろこびだけの存在だ。
感情が戻ったよと
愛想を振りまくあの子が笑う。
表面だけのあの子が
能面みたいな表情で。

勘違いさせて。
すれ違わないで。
焼け焦げる臭いが
誰も知らない空へ高く高く
途切れながらも掴むように舞い上がる。
知らないよ。
好きな歌を飲み込んでも知れないよ。
だってもうふたりはバラバラなんだから。


あなた。
曰く憑きの私。
主語は落としてばかりで
呼び合うことはもうしない。
「最初から終わりまで寂しいだけ」と私は言う。
「それでもいいよ。」とあなたが言った。



乾いた肌の質感。
汚れた月。
あの頃の愛しさ。
カラダの鎖。


儚さを夢見ている。
いつだって。

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