「パステル・カラー」/菊尾
聞かせてよ
その声で
彗星がぶつかってきても
身を寄せあって
兎が月に埋めてくれたのは
僕が渡した雨の素
ゆっくりと溶けて
月を覆っていくんだよ
薬指には小さな花
どこに居ても綺麗に咲いていた
爪の色
指先を動かせば残像で
虹が見えていた
僅かな
小さじ一杯分の魔法
風景の中に
君を見つけられる
文を書いている時も
時計を見た時も
君を描けるよ
たとえ空が落ちてきても
鮮明に
君の言葉が僕を運んでくれるから
何も怖くない
今日の事
すこし話すよ
雨が静かに微笑むように降っている
僕は君と
雨音を聴きながら話をする
電気はつけずに
ひっそりと
内緒話をするみたいに
小さな声で
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