晩秋 光と影/草野春心
 


  あの晩秋の午後
  我々を包んだ光の粒子
  その中に既に死はひそみ
  きみをとらえていた



  生と死のキメラ体
  それが
  命

   *

  きみの髪のにおいや
  神経質な足音
  折れてしまいそうな頸



  そう
  きみが死んだ



  たくさんの匿名性の中で
  きみの美しい名前が
  静かに忘れ去られてゆく



  それでもぼくは生きる
  たくさんの存在と
  いくつかの不在を胸に抱えて

   *

  休日の井の頭公園は大変な賑わいで
  ぼくはたった一人で



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