入院/たちばなまこと
 
いたく… 降り注ぐ中
ベビーカーで飛びだして
駅構内を邪魔者扱いされながら
エレベーターのあるところまで 何度も遠回りしながら
るいは笑顔をふりまき 水しぶきみたいなビーズを
きらきら きらきら こぼしながら

病院のエレベーターで話しかけられる
赤ちゃんを連れてきて大丈夫なの?
おじいさまかおばあさまか存じませんが きっと喜ばれるでしょうなぁ
帰りに同じ人と乗り合わせて
ああ! パパだったのね…! って

病気になると みんな
入院すると思ってて
小さい子を連れて お見舞いにゆくと
おじいちゃんかおばあちゃんに
会いに来たと思ってて
私は何も言わなかったけれど
くやしくて泣きたかった

家がいいよ 家がいいよ
みんなと一緒にいたいよ
他人に監視されない
消毒液のにおいがしない
土の上に建つ家に
日の当たる庭に花を見て
野鳥の詩(うた)や溜め息をきいて
るいがはしゃいだりぐずったり
ごはんの炊けるにおいがして
みんなの寝息であたたまる部屋で
ずっと 一緒にいたいよ

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