秋の金魚と揺れる水/千月 話子
暑くもなく 寒くもない
昼と夕の変わり目に見る太陽は
ぼうやり として
霞み懸かった空の川を
漂うように 浮かんでおりました
このように 繊細な秋の日には
水草揺れる金魚鉢を穏やかに持ちて
上手に水を入れ替えてあげましょうか
私はまるで お作法のように
丸いガラス器を両手で挟み
すり足で そっと縁側に運びます
紅緒さんは
「ああ もう七つ夜を過ぎたのですね」
と理解しているかのように
さほど びっくりするでもなく
たぷたぷ と
揺れに身を任せておりました
石畳に沿って歩く 木製のつっかけが
カララン コ
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