秋の金魚と揺れる水/千月 話子
 

  暑くもなく 寒くもない
  昼と夕の変わり目に見る太陽は
  ぼうやり として
  霞み懸かった空の川を
  漂うように 浮かんでおりました



このように 繊細な秋の日には
水草揺れる金魚鉢を穏やかに持ちて
上手に水を入れ替えてあげましょうか


私はまるで お作法のように
丸いガラス器を両手で挟み
すり足で そっと縁側に運びます


紅緒さんは
「ああ もう七つ夜を過ぎたのですね」
と理解しているかのように
さほど びっくりするでもなく
たぷたぷ と
揺れに身を任せておりました


石畳に沿って歩く 木製のつっかけが
カララン コ
[次のページ]
戻る   Point(10)