白掌/木立 悟
 


雨と雨のはざまに射抜かれ
さくさくと血は流れ出る
こんなにもうつろになってはじめて
流れ込むもののまぶしさに
いくつもの目を閉じることができる



光る灰は銀ではなく
小さな影と
小さな声を隠し持つ
自分と世界を行き来している
巨きすぎる羽の密度が
いつもふらふらしているので
すべては見えたり
見えなかったりする
隔たりではない隔たりの高まり
羽の高まり



うつろのなかにいくつか散らばる
うつろでないものを拾いあつめて
遠くゆらめく夜の原が
ひとつの目であることを知り立ちつくす
はばたきが
小さな声のはばたきが
手のなかの滴にひびきわたる



すれちがう光
追い抜く星
晴れた夜をつくる風
巨きな羽に掴まったまま
別の時間へと去ってゆく
いつのまにか道は白んで
雨の跡を照らしはじめる
いくつもの六月が
失った血のように流れ込む
終わるうつろ
はじまる水滴
いくつもの目のなかにひるがえる





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