「蝶葬」/菊尾
息した三時間前
もう見るべきものなど何も無い
だって世界は閉じてしまったのだから
尚も舞い上がり続けるあの蝶のように
この場所での限界はもう
とっくに越えてしまってたのだから
空は群青に俯(うつむ)いていく
私の好きな時間は過ぎてしまった
取り戻せる訳もなく私は佇んでいる
この場所で
あの日見た夕暮れを忘れてしまわないようにと
何度も呟きながら
自分に言い聞かせながら
失くし方を忘れた私に
羽根を下さい
場所を探しに
羽ばたく為に
私にはもう何も出来ないのだから
戻る 編 削 Point(1)