「蝶葬」/菊尾
 
螺旋状に渦巻く蝶の群れ
一切の躊躇(とまど)いも無く舞い上がる
空に蜜があるかのように

呼吸を止めた
雨垂れが石を穿(うが)つように
ゆっくりと呼吸を止めた
景色は傾き始める
閉じる前に見たものは
落ちていく一羽の鳥だった

幾重にも固めた漆喰(しっくい)が剥がれていく
理由なんかなく
病巣が広がりを見せるように
緩やかに確実に
全てが剥き出しにされていく

私は一滴一滴落としていく
顔を背くことすら出来ないまま
やがては溶ける蝋人形のように
足元に溜まる私の滴

抗(あらが)う術もなく終息し
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