無題/10010
 
君を黙読する――ご自身のカナリア(声帯)でお歌いください
(声帯は真空で、ぼくは空っぽの透明なインコ咽喉を絞める。音紋が体内の歯車から空気中の歯車へと樹状に噛み合って鳴り響くためには、頚部にかかる圧力が絶対必要なのだ。声を真空で濾過すること、それがボトルネックだ。もしかしたらそれでか細く死んでしまうかもしれないが、声と体のどちらかひとつは打ち震えるに違いない。声や魂が鳥であるかもしれないという疑念は古代エジプトの時代より人の姿をした《息吐ク者》が抱いてきたのであり、なんとなればそのときはぼくは君の喉を何万羽を以て鳥葬しよう! それでもぼくは君を黙読する)
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