地下室症候群/望月 ゆき
 
四方の壁に
お気に入りのタペストリーを
隙間なく 
貼っつけて

自由と
孤独は
いつでも紙一重だ。
などと つぶやいている

地下室では
いつも
ひとりぼっちだ

薄い天井の向こうに
誰かがいることを
わたしは
知っている
少なくとも ひとりは。

窓こそないが
なぜだかわたしは
外に広がる景色を
知っていて
今日は晴れている。

地下室では
ひとり
パスタをすする

くるくる と
まわしたフォークの手元が狂い
床にとりこぼしてしまった

地下室と
薄い天井の向こうとで
カシャン、と
同時に反響する


タペストリーは
こっそりふるえていた。


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