泪雨/愛心
 

ふ と

空を見上げると

家の間に

雲の子どもが住み着いていた


「おぉい」

こちらを向いた

「家賃は払ってくれますかぁ?」

雲の子どもは頷き

そこを動かない



僕は家に入った


放っておくことにした





数か月後

暑い夏が

台風を呼んだ



ほんの数か月の間に

雲の子どもは大きくなり

ここ数日

僕の家の周辺は

毎日曇りだった

洗濯しても

なかなか乾かず

しかも

家賃も払ってくれていない



「あのー」

雲がざわめく

「やーちーんー」

返事なし

雲の子どもは

いつ

雨となって

ここから離れてくれるのだろう





台風が間近に迫り

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