七人の話 その2/hon
 
否しないこと。
 志穂子もこれに反対はしなかった。このひと月の間、毎食時に志穂子は食事を運んでくる充と、おとなしく顔を合わせている。
 また、バラのことは仁乃の念頭にあったが、それはいまだ志穂子に訊けないでいる。


 さて、食堂ではちょうど今、六人の食事が終わろうとしているところである。
「ゴチソウサマ」
 秀人のかけ声で六人全員が唱和し、席を立った。各自、自分の食器を重ねて厨房へ運んでいく。
 見慣れたいつもの食後の風景。六人による平穏な昼食の後片付けであった。
 しかし、こんな六人による平穏な食事は、この日を境に変わってしまうこととなる。
 数時間後、彼らは忘れられない『幽霊列車の夜』をむかえることになるのだが、この時、彼らはまだ知るよしもない。

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