ひより/恋月 ぴの
 
自慢話うまいひとって羨ましいな
自分のこと話したくても
つい口ごもったりして

自信が無いだけなのかな

たとえばカラオケに行っても
わたしの番になると
他のひと達世間話なんかはじめたりして
わたしって音痴なのかな
ひとり画面に向かって歌い続ける
ちょっと寂しさ感じながらも
微笑み捨てずに歌い続ける

下手ならヘタクソって言ってくれれば

今朝の通勤電車
人身事故で止まってしまった
誰かが何かから逃げたくなって
ぺちゃんこになること選んだのかな

どうしてだなんて誰ひとり気にもしない
気にするのは会社に間に合うかどうかだけで

たまには聴いて欲しいよ
わたしの小さな自慢話
くだらないと思うけど誰か頷いてくれるかな

ぺちゃんこになった誰かの遺体
いつのまにかきれいに片付けられて
素知らぬ顔の通勤電車ごとんごとんと動きだす




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