水色の傘/カンチェルスキス
 







自分について語れない
夕陽が野原の風にすくわれて波となる
オレンジ色に染まった水色の傘が
骨組みだけ愛してと
叫んでいる
こうやって立っていると
何も見えないから座って
歩道橋を渡るとき
歩道橋の錆に手を触れる者は
誰もいない
交差点の黄色信号を見上げながら
何かいいたそうにしている
次の色を想像できなくなって
横断歩道の手前で
いつでも一時的に液状化する固形物だった
正門から出てきた
ガラス工場の送迎バスの
口数が多いのは数人で
あとは疲れ切った顔たちが
窓際に傾いて
右折した





  
 

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