オルファン/マッドビースト
 

 オレンジに染められた
 夕立の街はドラマチックだった
 そのくせ登場人物は一様で
 傘を差し身をかがめて
 濡れないように足元ばかリ見て歩くから敗残兵みたいで惨めだ
 情熱に溢れた雨粒は銃弾の勢いで身を投げ出しては
 受け入れられずにビニールの布地の上を伝って落ちていった

 傘がなくて
 キャスケットを深く被って飛びだした僕は
 集中砲火を受けた
 シャツは忽ち負傷 
 ぐしゅぐしゅになってへばりついたけど
 この季節の雨は血のように暖かいんだね
 触れることもせずに家路を急ぐ人達は
 誰も気付かないけれど
  
 崩れ落ちる西日は傷口のような生命力を見せ
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