それで手に取ったミルクはどんなふうに始末をつける?/ホロウ・シカエルボク
その夜に刻印は無い、とくにこれといって
しんとした冷たい、しんとした冷たい―隙間風が入り込むだけ
綿毛のように逃げていった古い名前と
綿ぼこりのように積みあがるいらぬ記憶
街路を通り過ぎる誰かの靴音にまぎれて、核だったものが行方不明
電灯におやすみを言うと月明かり
蛍光レモンイエローの感触を
受け止める暗色のカーテン
混ざりすぎて混乱したようないろどりの床に
ミルクをぶちまけたくなる衝動をどんなふうに美化しようか
その夜に刻印は無い、なにをしたところで
それがなにかになるようなものではないことは判りきっているから
無駄だと完璧に理解していることがらは
あらがう
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