ホスピス/比口
 
空が白んできたら、無数の糸がぼくをからめて
息苦しいくらいに涙を流させるんだ。

いつか、病室でママが言ってた。
「あなたは、恋人にあげた甘い蜜のかけらなの」

甘い、甘い、あまい  めまいがする。めまいがする。
白い病室は奥深くに隔離されていて、ママはそこでずっと夢を見ていた。
ぼくはいつもそのベッドの横で外の世界の話をする。
「コウノトリはもういなくて、ぼくはあなたの産道から生れ落ちたのです」

夢、夢は、ほんとうに希望なのかな?
(それなら壊れてしまえばいいのに)
グリム童話はフィクションで、神話は政治の道具。
海には人魚だっていないんだ。

水平線を人差し指
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