「風の中」/菊尾
柵の向こう側で綺麗に横たわっていてよ
低速の音
よぎり始めて、永く続いて、
何事もなかったように
始まってもいなかったみたいな
気が狂ったような風の中では
見えるもの全部が動くことを止めてしまう
僕の目も見ることさえ忘れてしまう
影の鳥
目で追える速さで空を横切った
花びらが舞って
蝶々は留まる花を見つけて
何色模様で今を描いていこうか
遠のいてしまえば
ただ、それまでの話
飄々としているのは
人が、怖いから?
自分の気持ちも知らないのだから
誰かの気持ちなんて分かるわけないよ
浮かされたのなら
鼓笛隊のリズムで飛び越えてしまえばいい
ほら、君もあんなに、もう遠い
僕らは、ただの点
点と点の間に線を引こう
線の内側で
声を交わそうよ
すこしの間を空けながら
戻る 編 削 Point(1)