外は苦労人の雨ばかり/あやさめ
テレビの画面から砂嵐が零れて
目を覆うような霧の中だけで走り始める
その佃煮にならないイナゴの形と同じ今日の雨
年度末に向けて消えていく文字の顔が
白と黒だけでない文字であればいいと祈って
布団から下に向けて夜を掘り進めている
この窓の外は今日も苦労人と自称する彼らの
たった8方向で定義された活動があって
いつまでたってもこの五叉路を曲がりきることができない
文字列は今にも転げそうな勢いでテレビの中に突っ込んで
追いかけた彼らの手首から先だけが折れていくのを
僕は次の窓から勝手に覗き込んでいた
繰り返してみる
外は苦労人の血の雨だけが存在して
苦労人の靴を滑らせていく
誰かが窓の中で彼を見つめているその外から全て
指先に絡まる液体が皆の足を滑らせていく
繰り返してみる
外は苦労人の雨だけが存在して
内ではただ静かな寝息だけが聞こえる
──全ては時間の行き先に向けて。
戻る 編 削 Point(3)