虚栄の鏡/比口
小道でつぶれた猫をみて
泣いて弔う ふりを、した。
人々は、まるで聖女でも見るかのような顔で空を仰ぎ見たけれど
私はそれを嘲笑した。
ひしゃげた命を踏みつけて、私は鏡を得たのです。
薄っぺらなガラスの板は泉のように
静かに、欺瞞にゆがんだ私を映しました。
見上げた空はやっぱり広すぎて、地図を落とした私は
ずっと立ち止まったまま一人迷子になりました。
居場所を、目的地を見失ったまま
鏡を抱えて一人秩序をなくした街に呑まれていきました。
ステンドグラスの光が額を撫でるように
私は鏡を磨くのです。
だって、猫の血を抱いて涙する私をみんな綺麗と言ってくれるでしょう?
ぼやけた世界と私との輪郭がはっきりするでしょう?
時折、何度も何度も鏡を割ろうとしたけれど
やっぱり私は境界を求めて鏡を磨き続けるのです。
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