臨界に富む/皆川朱鷺
 
「あ、あ あ   あ  ー…」
出た声は、か細くて、連想するのならば月光。
きっと肌は青白くて、本人は気にしながらもそんな自分を美しいと感じているのだろう。
しかし彼女が泣く意味は何だろう。
私は理解できない。
何故なら、彼女のような赤い薔薇は沈まない。
決して沈みようがないのだと、盲目的に信じているからだ。

■ ■ ■

永遠にループする夢を見れば、ひとりの女が気に食わぬ。
脳に貼りつき視界にちらちら、ゆれる、その女の像が気に食わぬ。
だから極力レム睡眠を避けたいのだ。
ああ、そうだ。
夜眠れないのが続くと、テンションが上がって睡眠がいらない体質
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