「 ふかづめ。 」/PULL.
とも、わからない。だからシタ子、わからない。シタ子は、わからない。シタ子には、わからない。わからない。わから、ない。
シタ子は、キイチのことを話すと、嫌な顔をする。
だからあたし、いつもキイチことを話して、聞かせる。
三。
「やすり。」
と言うキイチの声は、ざらざらしている。どこが、とは言えないけれど、いつもとちがう。ざらざらしてる。
「もう一度言って。」
「やすり。」
「もう一度。」
「やすり。」
「もう一度。」
「やすり。」
キイチはあたしに言われれば、何でもする。何度でもする。だからすぐに覚える。うまくなる。
なの
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