「シークレット・ガーデン」/菊尾
て眼を閉じた
君はくちずさむ
懐かしくなりたい為にくちずさむ
残酷に美化された思い出が僕らを引きずり回す
一体どこへ連れ去ろうとしているのだろう
現実が幻にすり替わっていくようだよ
繋がったまま途切れずに垂れ下がるヒトスジの唾液
うずまき管までこの舌先が届けばいいのに
手首で塞がれる視界
君は僕を食べていく
軋むベッドの音が部屋の隅へ溜まっていく
憂いをなぎ払うように散らし合う
骨を噛んだ後の表情を確認する両眼
カーテンの隙間からは光が射している
真昼に庭の中心で燃えていたのは抜け殻
君の脱皮を僕は助長する
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