夜/石畑由紀子
 

世界は
もっと不思議なままでよかったのに
虹の七色
逃げ水
姿見
知ってしまった全てが
恨めしい




君よ
その背中を覆う漆黒は
僕の夜だ
初めに与えたのは君のほうで
盲目にならないほうがおかしかった
舌に絡まり
胸を撫で
頬に張りつく部屋の湿度と
長細い弧の声とともに
乱れながら更けてゆく


君が解らない


漆黒を束ね
整えるたびに
まるで人が違ってしまう君の
理由なんて知らないままでいい
盲目にならないほうがおかしいんだ
初めから解っていたはずだ
夜に埋もれていたいのに
君は何度も束ねるから
僕も何度でも乱す

[次のページ]
戻る   Point(18)