「ceiling」/菊尾
 
小さな声だから聞き取ろうとする
耳を近づけて確かめた
話し終えるとうつむいて
まるでよその人みたい
誰だっけ
僕らは誰だっけ


いつもの建物
よく見かける人達
昨日と同じように過ぎた
溢れかえる靴音
どこへ行くのだろう
空がいつもより伸びて遠ざかる
もうここには居られないから
帰り続けている
迷子だから
今でもずっと
帰り続けている

うつろうあなたの影を手繰り寄せて眠る
起きれば行方知れずの影を探して外へ出る
何を思い悩んでも答えは白いまま
目に見える形だけを信じた
信じるために過ちを受け入れた
そうする以外仕方がなかったと言い聞かせても
胸はざわついて爪で掻かれる
繰り返し呟いても
思考は気泡を立てながら沈みこむ

声の裏側に今どんな気持ちがあるの
突き詰めれば苦しいだけ
あなたはもう忘れてしまった?
希望へと繋いだ過程は
今では見知らぬ誰かのもの

拭えない残像を
掻き消してよ
憶えているあなたの笑顔は
泣いているみたいだった
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