赤い糸の結び方/楠木理沙
 
あの日 小指から力なく垂れ下がった一本の赤い糸
小さくぷつんと切れた音が 本当に聞こえたんだ
小指から伸びた赤い糸は 君と一生結ばれて解けないものだと思っていたのに

そのとき わたしは気づいたんだ
赤い糸は結ばれているんじゃなくて 自分で結ぶものだったんだと
だから初恋は決して叶わないのだと

それからいくつもの結び方を試した
見かけを装うために蝶々結びをしたこともあったし
必死でこぶ結びをしたこともあった
緩やかに結んだからといって解けるわけでもなかったけれど
強く結んだからといって解けないわけでもなかった

それは一方的に解けたこともあったし
自分から無理やり解いたこともあった

今だってどう結んだらいいのかなんて分からない
でも そんな赤い糸を誰もが小指から伸ばしているんだと思うと
なんだか少しだけ笑えてくる
そして また次の一歩を踏み出そうと思うのだ
今度はどんな結び目が出来るのかを 楽しもうとさえ思えるのだ









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