「アケビ」/菊尾
砂へ溶かしてしまいたい喪失
止まればいいのにと外へ向けて口にした
嘘はそれだけ
胸に詰まる、喉の内側の感情
あなたが噛み砕いてくれたらいいのに
出口を見つけられず入り口から戻った
幾度も繰り返したのは翌日に違う答えを期待したから
草で足を切っても歩いた
日が暮れるまで出口を探した
「それでいい。」と
「大丈夫だから。」と
その一言があればきっと眠れる
それだけでいい
それだけがほしいのに
いつも願いは朽ちていく
アケビの実は些細に甘い薄紫
あなたが食べたのは私の指ごと
止めたかったのは身体の内側
あなたの横顔がそこにある
距離が測れずその場にいるだけ
全てが等間隔に並べられた私達
解れて途切れてしまいそうになる心
認めてしまえば終着点は遠ざかる
この先なんて要らないから
今は隣で眠らせて
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