ロシアパンを売る少女(reprise)/
mizu K
人びとの心をとかす、いぶき!
風が吹いた
市でにぎわう人びとの喧騒から
ややはずれた位置に立って
しずかにパンを売る少女はかすかに
その風のなかにほんのかすかに
春の喜びがまじっていることに
気づいて
ほおをすこし赤くしたのは
外気の寒さのためであったか
おとこのこがパンを買いに来たからか
冬枯れの楡の枝にはもうすでに
芽吹きのための力をたくわえ
今はまだ力をたくわえ
その日を
じっとまっている
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