客観的なドッペルゲンガー/榊 慧
金属製のペインティングナイフでキャンバスに油絵の具を塗りたくっている。
イーゼルの横にある机にはテレピンと絵の具が付いているらしいパレット。
伸ばしている途中の中途半端な長さの髪が、どうしようもなく鬱陶しいとぼんやりと思う。
何を書いているのかは、まだ分からない。
客観的なドッペルゲンガー。
大きな、大きな、とても大きな、キャンバス。
憧れている。漠然と。
何を描こうか決まっているわけでもなく、漠然と憧れている。
小さいところで育ったので、大きなものに憧れるのだろうか。
井の中の蛙、大海を知らず。
されど、空の高さを知る。
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