秋、/イツリ
雨が
秋、という題名の絵の上に降り注ぐ
細かな水滴が
キャンバスをしっとりと濡らし
少し滲んだ秋が
白い空のバックの中、
浮かび上がる
辺りは静まりかえり
落ち葉のカサカサする音も
どんぐりがコロコロ転がる音も
もう聞こえない
聞こえるのは
降り注ぐ秋雨の音と
冬、を予見する木枯らしの音
湿った木の匂いが
キンモクセイの香りと混じり合い
子供の頃、先生に怒られた日の帰り道の記憶を呼びおこす
秋、は絵の具がすぐに乾いてしまうから
筆を頻繁に濡らさないといけない
公園で
はしゃぎながら「あきみつけ」の宿題をする男の子を眺めつつ
21年前同じ季節に生を受けた、あなたへ贈る絵を描いた
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