焦がれ秋/九鬼ゑ女
山際に
吸い込まれるように
今日が息絶えて
まだらのまま
空を一巡して
闇に飲まれるのは うろこ雲
あたしはあたしで
西の空に
白い半月が血を滲ませているのを
見てしまったから
いまさら嘆いても
遅いのよねと
ひとりごち
釘付けになったまま
あたしの心は
まばたきもせず
・・・いろはにほへと
誰思う
東の空から
明日へ旅立つ人工鳥の羽飾りが
あたしの左目から右目に弧を描く
点滅するいまは
まるであたしのあの日
一瞬にして視界から逃げてゆく
こころなしか
秋は
季節の狭間に
居心地悪そうに
身を縮めて
今宵の星さえ
全て包み隠している
それでも
あたしは焦がれ焦がれて
・・・いろはにほへと
誰思う
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