七人の話/hon
 
彼女としては、秘密めいた面白おかしい話題として、秀人に訊ねたつもりだったのである。そのとき奈々子は、なんだかわからないが≪クライ話≫という語句を初めて聞き、その概念に触れたのだった。


「幽霊列車」
「幽霊列車だ。ごうん!」
 二人はひとつのかたまりのようになって渡り廊下をかけていく。
 そこで二人は役割を分担しており、睦夫が通ってきた通路の電気を消し、奈々子が進む先の通路の電気を点けていく。
 すると、薄暗く長い通路をぽつんぽつんと光源が移ろっていく。
 二人はきゃあきゃあと嬌声をあげながら、そのぼんやりした光を貫いて進んでいった。
 その様子はたしかにどこか幽霊列車のようであったかもしれない。
 窓の外には砂嵐が吹きすさんでいる。
 かつて止んだためしがなく、この先も世の終わりまで止むことのないであろう、あらゆる生物の生存が不可能な外の砂嵐。窓を一様な黒い闇に塗りつぶし、外を吹きあれる砂嵐を、屋敷に住む七人は彼らの言葉で“ノイズ”と呼んでいた。
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