ひりひりバス停/hope
から、
ひりひり、だ。
絡み交わした指と指の間を、呼吸のように繰り返す波の音が、めり込んだシーツのいちばん深いトコロで、通り抜けたの。
揺れ続ける髪から、波の匂い。
きっと、あなたの。
そして、あたしの。
震える空をみた。
まだ波の音は暗闇の向こうで、風の音が雲を連れ去ってゆく。
あなたが、ふう、と消えた。てのひらに残っていたあなたは、窪んだシーツにくっきりと、はっきりと。
そして、あたしは目を閉じたの。
そして、あたしはベンチの上で、新しい朝まで、きっと、あと、もう、すこし。
(まだかな、まだかな)
あさいちばんの、真っ赤な赤色で、クリーム色のラインが2本あるバスの、ねむたげな運転手さんに、気づいてもらえるようにと、大きく手を振る準備をしながら、待っているの。
だって、あたしはまだ、帰り道の途中なの。
(やっぱり海はみえないや)
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