ねじれたルービックキューブ/こうや
「ん」の書き途中
ペン先が滑り
始点にもどってしまった
その一瞬の間に回転し
くしゃっと崩れてしまった
ルービックキューブ状の
心のマス目を
見届けた者はいない
頭を駆け巡っている
無数のパイプたちは
まだ誰にも核心を明かさない
だから
その真相を問うため
手紙を海に流し
誰かからの返事を
気長に待ちたいのだけれど
やむを得ず駆使するのは
自分の足と自転車くらいだ
地理に疎くてよかったことは
このままひたすらに直進すると
何県にたどり着くか
分からないで済むこと
歩き続けていく地面の先にも
紡いでいく言葉にも
阻むものなどなければいいのに
唯一あるとするならば
足場をふさぐ巨木の根
ぐらいでいい
…現在執筆しているのは
そんな旅行記
ルービックキューブのねじれを
試行錯誤で直し
もう「ん」を書き損じないよう
気を張りながら
わたしは書き物机の前に座している
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