砂と針の道具の中/七生
時間が恐ろしいのです
砂は増えて
砂は減って
砂時計の中の砂はいつも変わらず一定なのです
時間が恐ろしいのです
時計の針は進んで
時計の針は後ろからやってくる
円の中でぐるぐる同じ場所を回るのです
ここに留まっていれば
いつか砂が増えてゆくのでしょうか
ここに留まっていれば
いつか針が後ろから追いついてくるのでしょうか
時間が恐ろしいのです
あの時間から遠ざかってゆく事が
砂時計のようにやがて戻ればいい
時計の針のようにやがて戻ればいい
時はどんな道具を使っても計れないものなのです
あの時間から私は動いていないのに
いつかこの場所が砂と針で埋もれたとしても
やっぱりわたしは此処に居るのです
時間が恐ろしい
砂と針に埋もれて
硝子の中を
円の中を
さまよい続けるのです
戻る 編 削 Point(0)