書店にて/石畑由紀子
ける癒し系
ゴーストを使って次々にカミングアウトしてゆく芸能人
壁の設置棚では電車の発車時刻を知らせ 街までの道のりを知らせ
祝儀袋にいくら包めばいいかをアドバイスし
昨夜見た夢を教えろと身を乗り出し
宗教はそれぞれ唯一の神を説きはじめる
ともに平積みされシカトを決めあう女性カリスマ作家
村上はもう一人の村上にこの羊男はオレのじゃないから戻れと文句を言い
チーズとバターは他愛なくケンカを続け
彼女は息子を彼女の表紙でアルバムのごとくその成長を披露し
写真家はフィルターの使い方とトリミングに得意気で
音楽家は自らの旋律に酔いしれて溜息をつき
詩人は早く朗読してくれとせがんでい
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