あの日、教会の裏庭で彼女は微笑みさえした/ホロウ・シカエルボク
 



教会の裏庭で
もう使われていない
左側面に大きな穴の開いた焼却炉にもたれて彼女と愛し合った
それをしたいと言ったのは彼女で
僕らがもう少しで別れ話をするだろうことは目に見えていた
それをしたいと言ったのは彼女だった
どことなくもう何も打つ手が無くなったふたりの空気のなかで突然に
しましょうと、はっきりとした口調で
それが欲望なのかどうかはそのときの僕には判らなかったのだけど
今にして思えばあれはたしかに欲望というたぐいのものではなかった(欲求ではあっただろうけど)
今にして思えば、たしかにあのときあれをすることは必要だったのだろう
行為のあとで少しすすに汚れてしま
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