ターテン/カンチェルスキス
お小遣いで
ネックレスを一つ買った
上機嫌に飛行機の座席に落ち着いた
ターテンのウエストポーチには
プレゼント用に包装してもらった
ネックレスが大事に
しまわれてある
おかあさんのためのものだ
高速道路のサービスエリアで
地元の小学生たちに囲まれ
不自由な足を
蹴っ飛ばされたことも
すっかり忘れてるようだった
離陸し
ゆっくり離れつつある
ソウルの街並みを
見下ろしながら
ターテンはいつのまにか
眠ってしまった
横顔からは
一つの達成感みたいなものが
にじんでいた
帰国して数日経ってから
土産に買ったネックレスの値段が
だいぶふっかけられてたものだと
同級生からターテンは知ったけど
うん、いいんだよ、と笑うだけで
ターテンは
卒業式のときに
あのネックレスをつけて
おかあさんが来てくれる
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