月下美人の恋/榊 慧
して。
私の側にいて。
私を愛して。
どの願いも、きっとあなたを傷付ける。
じゃあ、私はどうしたらいいの?
願いが叶うことは、必ずしも幸福になることではないのだと、知った。
太陽を望んだ愚かな月下美人は、私。
月下美人の花言葉は、「儚い愛」
儚すぎると思う。余りにも。
もう少し、丈夫な愛が欲しいと願うのは許されないとは思うけれど。
住む世界が違う。
与えられた命の重さだって。
きっと、その長さすら。
何もかもが違う。
私とあなたとの間には、世界で一番遠い身分の差がある。
わかっていたのに。
どうして、こんなにも恋焦がれてしまったんだろう。
手を伸ばしてしまった罪悪感と、それに伴う後悔。
それでも、愛しさばかり募って。
あなたが添えてくれた指が触れるころには、
私はもうほとんど透けて光の結晶のようだったけれど。
それでも、温かかったわ。
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