肉体を/石畑由紀子
 
爪痕がなんだというのだ 紅い染みがなんだというのだ 滅びゆく我


我を手厚く葬られたし 国道に擦りつけらるる畜生なれど


愛されたし 海の寝床をうしなって引き離さるる二日目の親子


だいじょうぶ女は強いんだから、って言葉、のなかに私は、いない、


唇をかんで雨を鳴らしゆく ここから全部ほつれてしまえ





あの言葉いったい誰に向かって言った もの欲しそうな手鏡を割る





肉体を捨て魂に服を着せただけじゃあなたに出逢わなかった





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